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旅と文具とカフェめぐり

フランソア喫茶室(京都)

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隠れ家的なカフェが好きなので、いつもは、そういった場所に好んで行くんですが、先日はちょっとレトロな気分に浸りたくて、昭和初期に開店したカフェに行ってみることにしました。

京都・河原町にあるフランソア喫茶室です。その当時なら、ハイカラに「カフェー」とでも呼ばれていたのでしょうか。

阪急・河原町駅を出て、人通りも多く賑わいを見せる四条通から、細々とした流れが残る高瀬川沿いの小道に入ると、さきほどまでの喧騒が嘘のような静けさだけがありました。

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昭和9年にオープンした当時そのままのカフェは、瓦屋根でありながら、その意匠がバロックの香りもする和洋折衷のレトロな建築です。平成14年に登録有形文化財(建築物)に指定されたそうです。

通りに面した窓はステンドグラスになっていて、店内では、外から見えたステンドグラスのあるボックス席に座ってみました。初代オーナーさんは、画家志望だったということもあり、その美意識が、店内の内装にも反映されているような気がします。椅子もテーブルも、昭和9年のオープン当時から変わっていないのだとか。

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重厚な作りの椅子と、赤いベルベッドを張りの座面がどことなく、教会を思わせます。(ホームステイしていたイギリスの古都、エクセターでは学校帰りに、よく、大聖堂のカフェでお茶を飲みましたっけ)

メニューには、美味しそうなケーキがいっぱい並んでいて。タルトタタン(タタン姉妹のリンゴのタルト)も美味しそうだし、レアチーズケーキも有名だというし。うーん、何にしよう~、と迷っていたのですが、お店の方が、ザッハトルテがおすすめですよ、とおっしゃったので冬らしいケーキかも、と思って、ザッハトルテにしてみました。

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遠くにあるので、小さく見えますが、ザッハトルテは結構な大きさでした!

ぶ厚いチョコレートの層の下には、甘酸っぱいアプリコット・ジャムが。食べごたえたっぷりのケーキでした。

そして、コーヒーは、「コーヒー(フレッシュクリーム)」を頂きました。

普通、カフェオレでもない限り、コーヒーを注文してもクリームはテーブルに運ばれてきてから自分で入れるものですが、こちらのお店では、こんな風にすでにクリームが入った状態で出てきます。

これは、『京都カフェ散歩』で読んだのですが、「ブラックは苦くて飲めない」と言う演劇人・宇野重吉のために、フレッシュクリームとエヴァミルクをホイップしたものを先にカップに入れて、そこにコーヒーを注ぐ、というメニューを作りだしたのだとか。それが、現在にも引き継がれているわけですね。

開店当時から、こちらのカフェを行きつけにしていた文化人も多く、画家の藤田嗣治や、作家の大江健三郎らも通っていたそうです。

カフェの名前「フランソア」は、画家ジャン=フランソア・ミレーにちなんだもの。ミレーの故郷・フランスでは、レジスタンスたちが、地下に潜って抵抗活動を繰り広げていたように、この『フランソア喫茶室』も、また、戦時中には、反戦運動の活動拠点となり、リベラリストたちが集う場となっていたとか。そんな、遠くもあり近くもある時代のことを想いながら、濃厚なクリームの味と、ほろ苦いコーヒーの味を同時に楽しみつつ、当時と変わることのない一杯を頂きました。

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店内を照らす、このレトロな天井灯も長い時を、そして今は、平和に語らう人々を見守ってきたのでしょうね。