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旅と文具とカフェめぐり

2年目の中屋万年筆

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一昨年の冬に、清水の舞台から飛び降りるような心持ちで買い求めた、中屋万年筆。 ただいま、2年目に突入しています。

お休みさせることなく使っています

わたしの「中屋」は、輪島漆塗仕上げ朽葉溜、という軸です。 クリップがついていないシガーモデルで、長さ的には一番長いロングサイズ。

以前の記事にも書きましたが、この飴色をした軸色と、菱型の象嵌に一目惚れしてしまい、買い求めることになったのでした。 そのあたりの経緯は、こちらの過去記事に。

【過去記事】中屋万年筆を買いました・1

なにしろ、「いつかは中屋」がまるで何かの合言葉のように、万年筆好きの方たちの間に浸透しているほど、中屋は憧れの一本なわけですから。

購入したときは、ついに、私もここまで来たかー、という感慨深いものがありました。

他の万年筆なら、インクが切れると少しの間、お休みさせるものが多いのですが(単に、他の万年筆も使ってあげないとね、という理由で・・・)、この中屋だけは別格で、お休みさせることなく、年中使っています。

お値段的にも、私にしてみれば「別格」の万年筆だったため、このくらいの特別扱いはしても構わないだろうと思うのです。

そのようなわけで、使い始めて2年目に入った中屋万年筆。これも良い機会なので、当初と変わったと思う点などを書きとめてみますね。

2年目を迎えて変わったなと思ったところ

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まず、外見ですが、一年以上、軸に触れたことで、下に塗られた漆の色がさらに透けて見えてきたように思います。

漆塗りの変化

特に、指が触れる首軸部分(ペンを握る部分ですね)や、キャップを閉めるネジの周囲、あとは、キャップの先端や尻軸のあたりが、飴色の漆の下から、鮮やかな黄金色がうっすらと透けて見えてきた感じでしょうか。

こうして、年々、軸の色が変化していくのが、漆塗りの軸の特徴でもあります。何度も丁寧に塗り重ねられた漆が、年月を経るとともに、独特の風合いを見せていってくれるのですよね。

こちらの万年筆を買い求めたとき、ナガサワ文具センター本店の室長さんも、これは、もっと良い色になりますよ、と太鼓判を押してくださいましたっけ。

軸の色が変化していく様は、自分がこの万年筆をどれだけ使い込んだか、そして、どれだけ愛用してきたかの証でもあって。万年筆は長く使いこむことによって育てる楽しみもあるわけですが。それは、ペン先だけに限らず、中屋の漆塗り軸では、軸の風合いを自分で育てていく楽しみも味わえるのですよね。

とはいえ、2年目では、まだまだ序の口に過ぎませんから。

この先ずっと使い続けて、その細やかな変化を見守っていきたい、そう思わせてくれる軸なのです。

書き味の変化

一方、書き味も少しずつですが、変化してきている気がします。

買い求めた当初も、もちろん書き味は良かったのですが、だんだんと手になじんできたというか、さらに、私の書き癖に合ってきたからか、ストレスなく書けるというか。

万年筆を使うに当たって、一番大事だなと思うのは、ストレスのない書き味だと思うんです。

ひっかかりや、かすれなどで、書きにくい状態のまま書き続けていても、イライラが増すばかりで、長くは使い続けられません。

特に今は、わざわざ書き味の悪い万年筆を使わなくとも、もっと便利で機能的な筆記具が安価で手軽に買える時代ですから。

ですが、その反面、ストレスの無い万年筆の書き味というものは、もう何物にも替え難いもので。

以前はあれほど、Pigmaやゲルインクのペンが好きで愛用していたものの、今は、書いていても、どこか物足りなく思うんですよね。(もちろん、ジェットストリームを使ってはいますが)

特に長文になると、書きやすい万年筆ほど、楽しく文字を書き進められるものはないと実感しています。

書きやすい→もっと書きたくなる→書きたいから毎日愛用する→ペン先が馴染んでさらに書きやすくなる・・・そんな好循環ループに入ると、この万年筆は幸せ者。

使っている自分も、幸せな書き心地に、ますます幸福感が強まって、さらに、万年筆への愛も深まるわけですね。手持ちのどの万年筆とも、そんな幸せな関係を築けたらいいなあ、と思っています。

・・・話が逸れてしまいましたが、とにかく、現在の中屋は2年目に入って、さらに手に馴染んで書きやすい万年筆になったように感じています。

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こちらの軸は、元々、細軟か中軟だったのですが、お店で買い求めた際、中屋万年筆の調整師・吉田さんに中字ニブに取り替えていただいて、さらに手帳にも細かく書き込めるよう仕上げていただいたもの。

プラチナの細字ニブは国産の中でも特に細めな気がするので、中字の細字よりという、このくらいの字幅で、ちょうど良かったかな、と。

この字幅なら、手帳だけじゃなく、方眼ノートにも書き込んだりできますからね。

意外と長くも重くもないんです

中屋万年筆は、軸が長い順に、ロング・ポータブル・ピッコロの3種類。

私の中屋は、一番長いロングサイズですが、書くときにはキャップを外しますし、キャップを外したときの尻軸からペン先までは、ほぼ日手帳にすっぽり収まるくらいの長さです。(前述の過去記事に、ほぼ日手帳とロングサイズを比べた写真を載せています)

これが、購入前、中屋万年筆のサイトに何度も通って、ページを見ながら想像していたほどには、意外と長くなくて。

それは、長さだけでなく、重さにも関係しているかも知れません。

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私は重い万年筆が苦手なので、モンブラン146でも太くて少し持ちにくく感じてしまい(あくまで私の好みです・・・)ワンサイズ細身の145を使っていますし、ペリカンM600でさえ重くて、金ペン堂店主さんの勧めでM400を購入したほど。

まあ、どちらも、4年以上前の感想ですから、万年筆に慣れた今なら、少々、手にしたときの感触も変わっているかもしれませんが。

もっぱら、小ぶりの万年筆を使い慣れている、こんな私でさえ、中屋のロングサイズを大きいとはまったく感じません。普通のペンケースには、まず入らないほど、こんなに長いのに!

軸の素材として使用されているエボナイトは金属軸とは違って、とても軽いこともあり、長く見えても、軸の重心やバランスが、ちょうど良いのでしょうね。もしくは、もともとキャップを尻軸にささない仕様のために、書くときには、余計に軽く感じるのかも?

とにかく、ロングサイズとはいえ、その長さを感じさせないほどの軽さで書き進めることができて、お気に入りです。

さいごに

漆塗り軸は、表情がどんどん変わっていく万年筆ですから、今後も、そのときどきの発見とともに、「中屋レポート」を続けていければと思っています。

毎日、使い続けること。そこから、すべてははじまるのですね。