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旅と文具とカフェめぐり

中屋万年筆を買いました・1

万年筆愛好家の中では、合言葉のようにもなっている「いつかは中屋」。

私も、万年筆の魅力に取り付かれ始めた頃から、いつかは、中屋万年筆が欲しいなあ、と思っていたのでした。

しかしながら、そのお値段もさることながら、漆塗り万年筆独特の佇まいに、なかなか手が出せずにいたというか。

万年筆を愛する者にとって、中屋は、ある種の到達点のような、いわばクライマーにとってのエベレストのような、遥か高みにあるもの・・・勝手ながら、そんなイメージを持っていたのかもしれません。 なんだか、初心者が無闇に手を出してはいけないような存在というか。

自分にはまだ早過ぎるだろうと自戒しつつも、いつか来たるべき、その日のために中屋のサイトをチェックして、モデルやサイズが各種ある中から、将来、お迎えするならどれがいいかなあ・・・と、妄想だけは大いにふくらませながら、「その日」を夢見ていたのでした。

中屋万年筆

そんな「その日」が、ある日突然、訪れることになろうとは。(購入までの経緯が少々、長いですが、おつきあいください)

その日は突然やってきた

地元・神戸のナガサワ文具センターさんで、中屋万年筆フェアがあるのは、年に一度。

そのときだけは、じかに、いろいろなモデルの軸を見たり、試筆することができるのです。サイトで見るだけでは大きさの違いや、ペン先の具合などが、ちょっと分かりにくかったんですよね。

9月末に、ナガサワさんで中屋万年筆フェアがあると知り、せっかくの機会だから、一度覗いてみようかな?と思ったのがはじまりでした。

それで、初日の金曜日にお店に伺って、実際に手に取ってみたのですが、結局、どの軸にするか、心を決めるまでには至らずに。 サイトで見ていたときも、目移りばかりして、一本に決められずにいたんですよね。

でも、実際に手に取れば、これ!という一本が見つかるだろうと思っていたのに、いろいろな塗りの豪華な軸が目の前に勢ぞろいして並ぶと、逆に、気後れしてしまって・・・。

一応、実際に見せて頂こうと思って、今回立ち寄った旨はお伝えしてあったので、そのときは、内心、やっぱり決められなかったよ~、とさらに悩みを深めただけで、おいとまして、帰路についたのでした。

もしかして、これはまだ、中屋とはご縁が無いってことなのかなあ、まだ早過ぎるってことなのかしら、なんて思いつつ。

それが、土曜日の晩になって、そういえば、ナガサワさんでオリジナルの中屋万年筆を出してなかったっけ?と、ふと思い出しまして。 どうして、それまで、そのことに全く思い当たらなかったのか、自分でもフシギなんですが。

それで、ナガサワさんのサイトを見に行って探してみると・・・ナガサワ・オリジナルの一本に、一目惚れ。色合いといい、佇まいといい、まさに、好みの軸でした。

この子をお迎えしますわ!と即座に決断して、翌朝の朝一番に、ナガサワさんに向かうことを心に決めて、その夜は寝たのでした。 (数年間、あんなに決められずにいたのに、決まると、もう一瞬でした)

ついに今度こそ、その日がやってきた

それで、日曜の朝、ナガサワ文具センターさんに駆け込んで、まず向かったのが、中屋万年筆の調整師・吉田さんがいらっしゃるテーブル・・・ではなくて、お店の万年筆陳列ケース。 そこで、オリジナルの朽葉溜を出して頂いたのでした。

今、ちょうど中屋フェアをやっていますから、直接、調節してもらえますよ、と言う店員さんに連れられて(実は金曜日にも来ました、とは言えないまま・・・)、今度は吉田さんのテーブルへ。

ナガサワ・オリジナルの朽葉溜は、細軟か中軟のペン先ですが、試し書きしてみると、書き慣れていないペン先のためか、どうも、ふわふわしていて、書きにくい。 そこで、ペン先を変えていただくことは・・・?とおそるおそる伺うと、良いですよ、と吉田さんから快いお返事が。(やったー)

ほぼ日手帳にこりこり書きたかったので、細めの文字を書けるものをお願いすると、中字を細く調整したほうが、あとで太めにしたくなっても出来ますから、ということで、中字のペン先をつけてくださいました。

その後も、細かくペン先調整して頂いて、やっと、私も、憧れの中屋のオーナーになることに。

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そうしてお迎えすることになったのが、こちらの、シガーモデルのロングサイズ、輪島漆塗仕上げ朽葉溜です。

中屋万年筆のモデルには、主に、胸ポケットなどにさすためのクリップがついている「ライター」と、クリップがない「シガー」があります。私は、外に持ち歩くわけではないので、クリップは必要ないし、シガーモデルでいいかな、とサイトを見ていたときから思っていたんです。

シガーというだけあって、葉巻っぽい形をしています。 (私はいつも、キャップを左手で握り締めて書くことが多いので、クリップが無いほうが握りやすかったりするんですよね)

中屋万年筆のサイズは、長さ順に、ロング>ポータブル>ピッコロの3種類。

普段から、あまり大きな万年筆は持ち慣れていないので、ピッコロで十分かも?とおもっていたんですが、金曜日に試筆させて頂いたら、意外と短かったことが判明。 私は、キャップを尻軸にさして書くのが苦手なんですけど、ピッコロでキャップをささずに使うと、ちょっと短かすぎて。(でも、その分、とっても可愛いサイズなんですけども)

一方、ロングというだけあって、すごーく長いんだよね、君は?と思っていたロングは、キャップを取って筆記してみると、それほど長くもなかったんです。 やっぱり、実際に手に取ってみないと分からないことって多いですね。

桐箱入りです

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立派な桐の箱に入れられて、我が家にやってきた、新入りさんです。

ついに、この日が来た!ということで、家に帰ってきて蓋を開けるときには、感無量でした。(一時は、まだしばらく、ご縁がないままかも、と思ってましたから)

綺麗な縮緬模様の布製の袋に入っていて、上を紫の紐でくるくる巻いた姿は、どことなく、着物の懐に隠し持つ小刀のような、凛とした佇まい。江戸紫のお高祖頭巾をかぶった奥女中さんが、夜半、懐から、そっと取り出す・・・みたいな光景を、つい思い浮かべてしまいます。

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手持ちのモンブラン#145と並べてみました。ロングとはいえ、ものすごく長いというわけでもないんです。(さすがに、これが入るペンケースはなかなか無いようですが)

軸はエボナイトなので、見た目以上に、すごく軽いです。あまり重量感のある万年筆を使ったことがない私でも、これなら大丈夫。

手触りも、本当に滑らかで、かといって、冷たいわけでもなく。漆軸独特のぬくもりがあって、肌に吸い付いてくるかのよう。

全体的に、飴色がかった色合いをしていて、キャップとの隙間から見えている、枯れかけた葉のような朽葉色も、とても好みです。私のイメージでは、茶室にある茶箪笥っぽい色、かな。

毎日、手で触れることで、軸の色もどんどん変わってきて、下地の漆の色が徐々に浮き出てくるようになるとか。

愛用することで、ペン先だけでなく、軸も変化していくんですね。この先、どんな風に変わっていくのかなあ。

せっかくの「大物」新人さんなので、もう少しリポートしたく、次回記事に続きます。