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旅と文具とカフェめぐり

初めてのヴィンテージ万年筆

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私にとって、初めてのヴィンテージ万年筆が手元に届きました。 モンブラン#22のボルドーです。

先月の東京旅行の折、丸善・丸の内本店で開催されていたヴィンテージ筆記具フェアで、ユーロボックスの藤井さんに、ヴィンテージ万年筆をいろいろ試筆させて頂いたことは、以前の記事に書きましたが、その際に、一番気に入った書き味のものを買い求めたのでした。

ただ、まだメンテナンス前の状態だったので、お届けは4月中旬になります、とのこと。

そして、待つこと1ケ月と少し。先日、やっと、この万年筆が東京から届きました。 ヴィンテージ万年筆を手にするのも、初めてなら、たぶん、自分より「年上」の万年筆も、実は、これが初めてでした。

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1960年代に生産されたもので、ウィングニブになります。

『趣味の文具箱 15』のヴィンテージ入門の記事によると、このウィングニブは、「60年代2桁シリーズの特徴」とか。

実は、以前から少し、ウィングニブに興味があったんです。

というのも、いつも、ステキな文具の写真を撮ってらっしゃるカメラマンの北郷さんがユーロボックスで買われたというモンブラン#221を『趣味の文具箱 14 』で見て、ニブの形(これもウィングニブ?)や、バーガンディ軸の綺麗な色、すっきりとした全体のフォルムもいいなあ、と思っていたんです。

そして、次の号、『趣味の文具箱 15』のヴィンテージ・ペン入門で紹介されていた、ヴィンテージ・モンブランの画像をうっとり眺めながら、やっぱり、ウィングニブって可愛くていいなあ・・・と、さらに憧れがつのり。 (この、ちょこっとだけ見えているニブが可愛くないですか?)

そこで、先日のヴィンテージ文具フェアでは、藤井さんに、ヴィンテージ・モンブランを中心に、ヴィンテージ万年筆初心者向けのものを何本も見せていただいたのですが、この#22が、軸の色も可愛いし、憧れのウィングニブだし、なんと言っても、ふわっとした真綿のような書き味が、それまでに経験したことがないものだったんです。

前述のヴィンテージ入門の記事にも、「しなるウィングニブ」という言葉が書かれていましたが、試筆の際、藤井さんに、力を入れて書いても大丈夫ですよ、と言われて恐る恐る、ペン先に力を入れてみても、(普段、万年筆で書くときには、いかに力を抜くかに気を使っているのに~)こんなに小さなニブなのに、ぐっと、その力を全体に受け止めてくれて、ペン先が柔らかく、しなるだけで、先が割れることもなくて。

ウィングニブは、外から見えるニブの部分は僅かですが、そのほとんどの部分が、フードの中に埋まっていて、ニブの大半を、フードがすっぽり覆うことで、左右からも、しっかりと、ニブをガードしてくれているというか。 それが、現行にはない、柔らかな書き味を作りだすのかなあ、とも。

逆に、これだけ、ふわふわした柔らかな書き味だと、万年筆を握る手からも自然と力が抜けていくそうです。確かに、まるで雲の上を歩いているような感触の書き味でしたから。

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手持ちのモンブラン145ボルドーと並べてみました。(右が#22、左が#145です) 22のほうが2cmほど短いでしょうか。 軸の両先端が、145は丸みを帯びていて、#22は天冠部分も含め、すぱっと切った形になっているせいもあるかも?

145は、カートリッジ・コンバーター両用式ですが、#22は、ペリカン・スーベレーンなどと同じ、吸入式です。 (尻軸に金環のある#145のほうが、吸入式っぽいですが、これは飾り。#22は、インク吸入のために、くるくると回せる部分が大きな写真では、うっすらと、線が見えています)

実はスーベレーンM400も、まだ、自分では一度も吸入したことがなく、この#22で、初めてインク吸入を体験することになり、ドキドキだったのでした。(一応、藤井さんに、インクの吸入方法は教わっていたのですが、なにぶん、1ケ月も前のことだったので・・・)

あと、キャップ部分が、#145はネジ式ですが、#22は勘合式。カチッ、と音を立てて閉まります。 手持ちの万年筆は、LAMYサファリとペリカーノJr.以外は全部、ネジ式なんですが、この、クルクルとキャップを回して外す動作が、これから書くぞ、という気合いれのようなものにも思えるので、結構好きだったりします。 でも、勘合式だと、キャップの開け閉めのとき、軸に傷がつかないか、ちょっと心配だったり。(LAMYサファリだと、そんな心配も無用ですが)

さすが、60年代の万年筆ということで、丸善で試筆させて頂いたときには、まだメンテ前だったので、キャップでこすれたのか、はっきりした跡が軸にあったり、フード部分にも、かなり、細かいこすれ傷が入っていたんですよね。 それは、もちろん、長く愛用されてきた万年筆の証でもあるわけですが。

なので、この万年筆が、メンテナンス後、手元に来て、パッケージを開けたときは、すっかり、その傷も消えて、綺麗になっていたのを見て、驚いたのでした。(藤井さん、ありがとうございます~!)

さすがに、インクビューには、小さなかすれ傷などがありますが、それも全然、気にならないくらいです。 でも、たとえ、どれだけ傷があっても、この書き味には惚れ込んでいたのですが。

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天冠部分です。どちらも、可愛いホワイトスターです。

これから、私と一緒に、年を取っていけそうな万年筆。 むしろ、「人生の先輩」と呼ばせていただいたほうがいいかも知れません。 これまで40年以上の間、この万年筆が、どんな言葉、どんな文章を書き止めてきたんだろうなあ、としばし、思いを馳せてみると、ノスタルジックな、甘酸っぱいような気持ちが、じんわり、胸に込み上げてきたりして。 ヴィンテージ万年筆って、現行品には無い書き味を味わえるのはもとより、そういった、誰かの思い出も含めて、自分が受け取っていくことなのかな、と思いました。 これまでの持ち主の方と同じくらい、長く、私も使い続けていければと思います。これから、よろしくね。