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旅と文具とカフェめぐり

切手の博物館(目白)

20170705204113 先週、東京に行ってきました。(6月の東京旅行記を、つい先日、完結させたばかりですが(^^;)

今回、訪れた場所などをご紹介しますね。 まず、向かったのは、切手の博物館(目白)でした。(上の写真のオブジェ、ちゃんと消印になってるんですよ)

最近、お手紙を書くことも、めっきり少なくなりましたが、それでも、コレクターとまではいかずとも、昔から、綺麗な切手や可愛い切手を買い集めてしまうほうなのです。

ちょうど、企画展示『読書の楽しみ』展が開催中ということで。 今年が国民読書年であることから、世界中の物語や絵本、童話などの切手を一同に集めたとのこと。 切手という小さな画面に、どんな物語が描かれてきたのか、そんな興味もあって、いそいそと足を向けてみたのでした。

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一階の受付を入ると、すぐ、『読書の楽しみ』展が閲覧できるようになっています。 「約100ヵ国(地域を含む)・800点余り」の切手が集められているとか。とにかく、いっぱいありました。

有名なところでは、アリスやピーター・ラビット、ホームズなど。知っているお話の、有名な場面を探すのも、また楽しかったです。 ある程度、切手の大きさは標準化されているとはいえ、各国の切手の形(横長だったり)とか、デザイン性の違いなども、国それぞれで、ユニークで面白かったり。 個人的には、フィリップ・マーロウの切手まであるよ!と、びっくり(笑) 小さな島国が、外貨獲得のために、海外コレクター向けに、凝った切手シリーズを製作するんですよね。その一部だったみたいです。 こちらの博物館は、入館料200円とかなりお安いこともあって、たぶん、30分もあれば出てくるんじゃないかな、と当初は思っていたのでした。

実際、この企画展示を見ていたのは、30分弱だったのですが・・・

さらに、現在、3階で特別展示『切手で楽しむ文学展』を開催中なので、そちらも御覧になりますか?と、最初に受付で訊ねられて、まあ、せっかく来たし、見てみようかな、という軽い気持ちで、さらに、300円の観覧料を支払っていたのです。

実は、そちらのほうが、予想外に面白くて、ですね・・・。

3階のスペースで展示されていた『切手で楽しむ文学展』。 こちらは、一般の切手コレクターの方たちが文学と絡めて作製された、切手コレクションでした。 とはいえ、それぞれに、趣向がこらしてあって、じっくり読んでいると、あっというまに時間が経ってしまったほどで。 作家の肖像を使った切手や、略歴とともに、作家の故郷の風景印を押したハガキが展示してあったり。 特に、私が興味深く拝見したのが、日本文学の作家の直筆原稿(複製)だけでなく、作家直筆のハガキ(実物)まで集めて、展示されていたコレクションでした。 夏目漱石や、谷崎潤一郎、斉藤茂吉など、これだけ多くの作家たちの直筆を一斉に目にする機会など、なかなか無いですから。 複製とはいえ、当時は万年筆で書かれたであろう、その筆運びや元はセピアインクだったのかな?と思うようなインクの色など、作家それぞれの個性ある字体や、使用している原稿用紙など、切手よりも、むしろ、そちらを熱心に眺めてしまいました。

また、宮沢賢治の原稿は、反故紙の裏紙に、エンピツらしきもので、なぐり書きされていて。他の作家たちが、和服を着て、書斎で原稿用紙に向かい、万年筆を走らせている、いかにも作家然とした姿を髣髴とさせるのに対して、北の大地で、厳しい状況の農地の世話に明け暮れながら、そんな生活の合間にも、ランプの灯りの元で、裏紙に物語を走り書きしている賢治の様子が、ふと、思い浮かんだりして。

『銀河鉄道の夜』の中の一枚、ジョバンニという名前が何度も出てくるのを眺めながら、たとえ、複製であっても、そこから、作家の物語に対する執念のようなものを感じた気がしました。 宮沢賢治のもう一枚の直筆原稿(複製)は、「ビジテリアン大祭」だったと思うのですが、知らないお話だし、かなり修正も多かったので、軽く読み飛ばしてしまったのですが・・・

昨日、たまたま、雑誌『Frau』の記事を読み返していたとき、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を、好きな一冊に挙げていた稲葉さんが、この本では、「セロ弾きのゴーシュ」と「ビジテリアン大祭」がお気に入りと語ってるじゃないですかーっ。 ああ、もっと、ちゃんと見てくれば良かった(><) (というか、『銀河鉄道の夜』は、表題作をアニメ映画で見たり、他の短編を教科書で見たことありましたが、ちゃんと読んだことがないので、改めて、文庫を買って読もうと思いました(^^;)

ほかには、与謝野晶子が地元の堺出身なので、懐かしい、堺の歌碑の写真も一緒に展示されていて。 実は、出身高の大先輩で、校内の中庭には歌碑があったのですが、残念ながら、その写真はありませんでした(^^; よく、文学愛好家らしいグループが来校されて、図書室のガラスケースに保管されている初版本を見にいらしたり、歌碑の前で写真を撮ったりされていたので、そんなこともあったなあ、と昔を思い出したり。

(2010.11.13追記;こちらのコレクションを作製された池澤様から頂いたコメントによると、高校の校門前まで行って下さったそうです。ただ、学校校内ということで、遠慮されたとか・・・。見て頂けなくて、残念でした(><))

また、ロシアの詩人プーシキンに関するコレクションでは、切手の紹介とともに、プーシキンの生い立ちが詳しく書かれていて。 プーシキンが一歳の頃、皇帝の前で帽子を脱がなかったから、乳母が代わりに怒られた、というエピソードには、くすっと笑ってしまいました。一歳なんだから、仕方ないでしょう、というか(^^; プーシキンが読んでいたという、シェークスピアの肖像切手やトルストイの肖像切手(ここでまた、『戦争と平和』を現在、読んでいる最中、という稲葉さんのインタビューを思い出す私。もう読み終えたかしら・・・?)なども展示されていて。

幅広く、いろいろな切手を、テーマに関連づけて紹介されていたので、こちらの特別展は、切手コレクターでなくても、読み物として、どれも、面白く拝見できるものでした。

気付いたら、この3階の展示室だけで、一時間も見てました。これが、博物館の学芸員さんとかじゃなく、一般の方が、それぞれ、個人で作られた、というのが、すごいなあ。 わずか500円で、一時間半も楽しめて、知らないことも、いっぱい知ることが出来たので、小さいながらも、わざわざ足を運んで良かったと思えた博物館でした(^-^)

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旅行から帰宅して、トラベラーズノートに、入館券を貼ったり、簡単な感想を書き留めたりしておきました。