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シャルトル・ブルー ~大聖堂の名を持つ万年筆

シャルトルは、パリから電車で一時間ほどの場所にある、のどかな町。

シャルトルの町のシンボルとも言うべき、シャルトル大聖堂は、12~13世紀頃に建てられたゴシック建築の教会で、世界遺産にもなっています。

約800年前の建設当時の姿が、現在もほぼ変わることなく、そのまま残っているため、とても貴重で「奇跡の建築」とも呼ばれているのだとか。

この荘厳で巨大な教会は、屋根以外全てが石でできているため、天井を高く、窓を多く、明るい開放的な空間にしようとすると、石積みだけで壁が崩れないように建物のバランスを取るのは、大変に難しかったそうです。

当時の石工たちがどのような技術で、この大聖堂を造り上げたのかというエピソードが『美の巨人たち』で紹介されているのを見ました。(建築好きなので、つい長々、肩ってしまいました)

KIRIN~美の巨人たち~「シャルトル大聖堂」

美しい青のステンドグラス

シャルトル大聖堂のもう一つの大きな特徴は、176枚にも及ぶ、美しいステンドグラスにあります。

なんと言っても印象的なのは、その鮮やかに澄んだ青です。「シャルトル・ブルー」と呼ばれる青。ガラスを着色した際の含有物などの関係で、現代においても再現が難しいという、独特の色合いが表現されています。

そんな、シャルトル大聖堂の美しいステンドグラスをイメージして作られた万年筆が、プラチナ#3776センチュリー・シャルトル・ブルーです。

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まさにステンドグラスのように、万年筆のボディが光に透けているのが分かるでしょうか。

透明軸ですが、中がすべて見えるわけではなく、かすかに透けるあたりが、とてもおしゃれですよね。

プラチナ万年筆 Century Chartres Blue

※上記は、初回ロット限定シリアルナンバー付きの商品ページなので、現在、販売中のものは、初回特典がついていないものがあります

3776は、ミッドナイト・オーシャンでも持っているので、これで2本目になります。

・【過去記事】ミッドナイト・オーシャン~深い海の色に魅せられて

個体差もあるかも知れませんが、プラチナの万年筆は、字を書いていると、シャリシャリと微かに紙を引っかく感触と音があるのが個人的には、とても気に入ってます。

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手持ちの万年筆では、トリムなどの金属部分が銀色のものが多いんですけど(ミッドナイト・オーシャンしかり・・・)。

シャルトル・ブルーの深い群青色の軸色に、金色トリムは別段、派手すぎることもなく、ほど良いアクセントになっているように思います。

スリップシール機構がついてます

このシャルトル・ブルーは、実は、昨年、買い求めたもので、新しく#3776センチュリー・シリーズに組み込まれたという、「スリップシール機構」を試してみたくて、こちらに書くのが今頃になりました。

「スリップシール機構」というのは、簡単に言うと、中のインクが乾きにくいようになっている、完全気密キャップのことです。

通常、万年筆は、使わないままだと、インクに含まれる水分が次第に蒸発していって、字がかすれたり、書けなくなってしまいます。

また、水分が蒸発して濃度が濃くなったインクが、中で固まってしまうと、これが難儀で、こびりついたインクを洗浄するのは、素人では無理な場合も。最悪、メーカー修理、ということにもなりかねません。

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このような事態を防ぐためには、とにかく、万年筆を頻繁に使うことで、インクの流れを良くして、固まるのを防ぐしか対処方法はありませんでした。(私も、さすがに毎日とはいきませんが、2日か3日に一度は、ほんの少しでも万年筆を使うようにしています)

こういった、万年筆独特の悩みを解消しようと、プラチナ万年筆で独自に開発されたのがスリップシール機構です。

通常の万年筆では、4ケ月で完全に蒸発してしまうインクがスリップシール機構を持つセンチュリーだと、2年放置してもインク残量は半分あったとか。

スリップシール機構の詳しい説明や、実証検査の結果は、こちらに。

プラチナ万年筆/Century

私も、このシャルトル・ブルーは昨年来、月に何度か、思い出したように使うほどでしたけど、いつ書いても、インクがかすれることはありませんでした。(他の万年筆なら、絶対、インクが出なくなってたと思います)

なので、普段使いではない、ちょっと変わった色のインクを入れておいて、ときどき、気分を変えたいときに使う、なんていうのもいいかも?と思ってみたり。

でも、そんな風に使うには、あまりにも書き心地が良いので、もったいないんですけどね。

真っ黒いボディの、いかにも万年筆、といった正統派も私は好きですが、もう少し、おしゃれに見える万年筆がいいな、という方には、このくらい上品な透け感がある万年筆がおすすめかも知れません。

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普段は、透明軸とは思えないくらい、中に入っているインクも何も見えないですけど、字を書きながら、ふと手元を見ると、万年筆のボディが光に透けて、その様子が とても綺麗なんです。

しかも、スリップシール機構があるので、万年筆を使うのはたまに、という方でも、しばらく放置しておいても、少々のことでは、インクが中で固まってしまうこともないですから。

私が買ったのは中字(Mニブ)で、入れているインクは色彩雫の天色です。

・【過去記事】天の色のインク~ama-iro

ただ、今では天色は、ソフトカラーのみずいろkakunoで使うのが、すっかりお気に入りになってしまったので、次にシャルトル・ブルーにインクを入れるときには、別の色にしてみようかなあ、と思っていたり。

どんな色のインクでも似合う気はしますが、それでもやっぱり、ブルー系になるのかな?

さいごに

イギリスに滞在していた頃、どんな小さな村に行っても、そこには教会があって、中に足を踏み入れると、シャルトル大聖堂のものほど大きくはなくても、ステンドグラス越しに差し込む、外の光が綺麗な色になって、石の床を照らし出していました。

私にとって、このシャルトル・ブルーは、そういった旅先で出会った一瞬の光景を、ふっと思い出させてくれる、そんな万年筆でもあるのです。