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万年筆日和・2~万年筆の選び方

前回に引き続き、万年筆初心者の方に贈る「万年筆日和」シリーズ。

第二回目は、初めての万年筆選びについてです。

万年筆を使ってみたいけど、たくさん種類があって、どれを買えばいいか分からない。そんなことってありませんか?

初心者さんが1本目や2本目の万年筆を選ぶ際、なにかの手助けになればいいなと思って、今回の記事を書いてみることにしました。

なにぶん、個人の意見ですので、こういう選び方や見方もありますよ、というちょっとしたアドバイスとして読んで頂ければと思います。

万年筆のニブを決めよう

最初から専門用語が出てきて恐縮ですが、万年筆には、ペン先の太さ(ニブといいます)が、さまざまあります。

一番細いものからEF(極細)→F(細)→M(中字)→B(太)→BB(極太)・・・ となっています。

メーカーによっては、さらに、細かい分類に分かれている場合もありますが、まずは、上記5種類を覚えておけば、大丈夫です。

自分が万年筆で書き込みたいもの(たとえば、手帳やノートなど)を基準にして、ニブを決めると、購入後も使い続けることができるので、おすすめです。(手帳に書き込むことが多いのに、太い字幅のものを買っても、書きにくいだけですから)

手帳に細かい字を書き込むなら、EFかF。

太めの罫線のノートに書き込むためなら、FかMを選べば良いかと。(※国産万年筆の場合です)

ただ、同じFニブでも、国産と比べると外国製の万年筆は全体的に太めになっている傾向があるので、注意が必要です。たとえば、私の手持ちだと、国産万年筆のFと、外国の万年筆のEFが同じくらいの字幅になっていることが多いですね。

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こちらは、7mm横罫のノートにペリカン・スーベレーン(EF)で書き写したもの。

EFニブなのですが、全然、極細じゃなくて。国産万年筆ならF(細字)くらいの字幅です。

B以上のニブはかなり太いので、使用が限定されますし、あまり初心者には、おすすめできません。

ということで、最初の1本としてはEF~Mまでのニブの中で、自分が一番使う手帳やノートに書きたい字の大きさにあわせて選んでみるのはどうでしょうか?

ペン先の材質は? 予算は?

ペン先の材質には、金ペンとスチールペンがあります。

スチールペンは鉄で、金ペンには金が使われています。(金ペンには14金や18金、21金などがあり、もちろん、この中では21金が一番お高いです)

値段的にも高い金ペンのほうが、柔らかい書き味で書きやすいですが、これも好みで、スチールペンの硬さが、ボールペンに慣れている若い世代の方にとっては書きやすいということもあるでしょう。

もちろん、金ペンを買いたくても、予算5千円以下では残念ながら、ラインナップがありません。金ペンだと、1万円前後ぐらいから。スチールペンだと、安ければ300円くらいからあります。

まずは、お値段的に安価なスチールペンで万年筆に慣れてみるか、少し値は張りますが、最初から書き味の良い金ペンを購入するか。その辺は、お財布との相談になりますね。

お手頃価格の若い方向けの万年筆といえば、以前は、ドイツのLAMY(ラミー)が代表格でしたが、今は、パイロットのカクノがあります。

カクノならお値段的にも1本1000円なので、もちろん、ボールペンとは比べ物にはなりませんけれど、万年筆の中では、格段に安いほうです。そして、こんなに安いのに、とっても書きやすいんですよ。

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私が持っているカクノは3本。

3本ともFニブです。ほぼ日手帳や、他の手帳に書き込むのに使っています。

【過去記事】2本目は、みずいろカクノさん。

金ペンも何本も持っていますが、カクノはスチールペンならではのお手軽に使えるところが好きなんですよね。(なんと言っても、千円ですから!)

国産と海外製の違い

これはペンドクターさんに教えて頂いたことですが・・・

パイロット・セーラー・プラチナなどの国産万年筆は、漢字を書く用に調整されていて、外国の万年筆は、英字などを書く用に作られています。

もちろん、作るときに、その国の字が書きやすいように、調整されているからですね。

外国の万年筆は、漢字を書く際の、トメやはらいを書くようにはできていないし、筆記体などが書きやすいように、調整されているとのこと。

私はあまり気にならないほうですが、お習字のような字を書かれる方なら、漢字を書くことを想定して作られている、国産万年筆のほうが使いやすい、ということもあるかも知れません。

ちょっとしたことですけれど、万国共通のボールペンとは違って、万年筆には、そういう特徴があることも知っておいたほうがいいかなと思います。

できれば試し書きしてみよう

もし、可能であれば、万年筆を買う前に、試し書きすることをおすすめします。

カクノなどの安価な万年筆だと、試し書きができるお店は限られていますが、1万円前後の万年筆だと、売り場で申し出れば、大抵の場合、試し書きすることができます。(大型文具店や百貨店なら、まず大丈夫かと)

やはり、ペンの持ち方、書き癖、好みのペン先の硬さは、人それぞれなので、他の誰かにとっては書きやすくても、自分にとってどうなのかは、実際に書いてみないと分かりません。

あと、ペンの重さや太さや重心も万年筆によって違うので、実際に持って書いてみて、持ちやすいかどうか書きやすいかどうか、確認したほうが、無駄な買い物を避けられます。

特に、1万円以上もする万年筆は高価ですし、慎重に買い物したいですよね。

(ちなみに、私の場合は、手が小さいほうだからか、一般的に愛好者の多い、モンブラン149でも太くて重く感じてしまい、試し書きの段階で、買うのを諦めました・・・。ただ、好みというものは、変わってくるものなので、慣れると以前は重く感じていたものも、そうは思わなくなることもあります)

同じ万年筆を何本か在庫から出して頂いて、自分が一番書きやすい個体を試筆して購入することもできますから。遠慮は無用ですよ。

また、注意しないといけないのは、試し書き用としてカウンターに用意されている万年筆や、店員さんの私物の万年筆を貸して頂いた場合だと、書き味が良すぎること!(箱に入っているものを出して頂いたときは、その限りではありません)

万年筆は未使用で買ったばかりのときよりも、長く使用されていたもののほうが断然、慣れて書きやすくなっているからなんです。もう、その、あなたの万年筆を売ってください、と言いたくなるほどに。

つまり、多くの人が試し書きすることで、とても書きやすい個体になってるということですね。

それを知らずに、同じ品物を買って帰ったのに、新品だと、書き味が試し書きしたものと全然違う!とガクゼンとすることも。

その場合も、だからといって不良品ということは、稀かと思います。試し書きで体験した素晴らしい書き味に近づけるには、なにより、自分が使い続けてあげることが大事です。

もちろん、購入した直後から、書き味が良いものもあります。 でも、その万年筆も、書き続けることで、さらに書き味は良くなってくる。自分の手や書き癖に、どんどん馴染んでくるんです。

ボールペンのように、買った直後から同じ書き味がずっと続くのではなく、万年筆の書き味とは「成長していく」ものなんです。自分で地道に育てていくものなんですね。

万年筆を通販で買う場合、気をつけたいこと

でも、家の近くに、試し書きできるお店が無い場合もあるでしょうし、通販で買うケースも多いでしょう。

通販で万年筆を購入した場合、ごく稀にではありますが、ニブに段差ができていたりして、書きにくい個体に当たってしまうことがあります。

万年筆を使い慣れている方なら、この個体(だけ)が不良品だと判断がつけられますが、 初心者の方だと、こんなに書き味の悪いものが万年筆か!と勘違いしてしまうことにもなりかねません。要注意です。

私も、何度も通販を利用していますが、あまり書きにくい個体に当たったことはないかな?

ですが、万年筆は、すべての個体が全く同じ、均一の状態というわけでもなく、個体ごとに多少の違いがあるものなのです。安価なスチールペンでも、高価な金ペンでも同様に。微小ながらも、いわゆる「個体差」が製造工程の関係で出てきます。

ということは、悲しいかな、当たりはずれもある、ということで。

もちろん、品質管理や検品がしっかりされていれば、そういう「ハズレ」が出ることは無いはずなのですが・・・。

その点、国産万年筆は安価なものでも品質管理はしっかりされていますし、1000円のカクノであっても、まず、大丈夫だと思います。

特に、通販であまりにも安く売られているものは、要注意かも知れません。 文具店ではない、明らかに、通販専門の格安量販店などで半額以下で扱っている場合とか。

  • 同じ型番の万年筆でも個体差があって、それぞれに状態が違う
  • あまりに安すぎるものは、不良品の可能性もあるので注意が必要
これらを知った上で、通販を利用したほうがいいと思います。

不良品や「ハズレ」の個体に当たらないようにするには、やはり、ちゃんと万年筆のことを知ってらっしゃる店員さんがいる文具店で購入すること(実店舗でも通販でも)。

あとは、できるのならば、自分で試し書きしたものを買うこと、でしょうか。

万年筆を選んでみよう

ここまで紹介した、万年筆を選ぶポイントをもとにして、数ある万年筆の中から、自分に合った一本を絞りこんでみましょう。

  • ニブ(EF・F・M・・・)
  • 材質(スチールペンか?金ペンか?)
  • 予算(1万円以下?1万円以上?)
  • 国産か?海外製か?

もちろん、外見が気に入ったから!という理由も大きいですよ。使い続けるには、愛あることが一番ですから。

その上で、書きやすいものなら、尚更、愛着も湧いてきますもんね。

では、最初の1本は?

では、最初の1本は、具体的にどの万年筆を買えばいいの?となりますよね。

その前に、まず、私が最初に買った万年筆のことを書いておきますね。

中学生の頃から、手紙を書くときには700円くらいの、今でいうデスクペンのような万年筆を使ってはいましたが、それが書けなくなってしまってからは、長い間、万年筆を使っていませんでした。

それが、ほぼ日手帳にはまると同時に、万年筆にも興味を持ち始めて。そこで私が買った、久しぶりの万年筆は、LAMYサファリのMニブでした。

それ以降、本格的に万年筆を使い始めることになるので、私の最初の1本は、LAMYサファリのMニブ、と言っていいかもしれません。

その後、すぐにLAMYサファリのEFニブやペリカンのペリカーノ・ジュニアも購入。 そのときの記事がこちらです。

【過去記事】LAMYサファリとペリカーノ・ジュニア

いずれもスチールなので、書き味は硬めですが、LAMYサファリのEFニブは、今も、色彩雫の山葡萄インクを入れて愛用しています。

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(こちらは、わたしが2本目に買った万年筆、LAMYサファリ限定ピンクのEFニブです)

おすすめの万年筆・スチールペンの場合

初心者さんの最初の万年筆としては、背伸びしなくても、まずは千円~三千円ほどのお手頃なスチールペンで万年筆体験をしてみるのがいいんじゃないかな、と思います。

その次に、1万円前後の金ペンにステップアップして…という感じで。

スチールペンなら、カクノか、LAMYサファリが、お手頃価格で、おすすめです。

男性だと、カクノは外見が可愛すぎるかもなので、LAMYサファリで。さすがドイツ製だけあって、LAMYは無駄の無いスタイリッシュなデザインがかっこいいです。毎年、限定色も出るので、好みの軸色も探しやすいですね。

おすすめの万年筆・金ペンの場合

金ペンだと、個人的には、プラチナの#3776センチュリーがおすすめ。

私はプラチナ#3776センチュリーでは、シャルトルブルーという、群青色が綺麗な軸を持っています。

シャルトル・ブルー ~大聖堂の名を持つ万年筆

これだと、金ペンの中でも比較的お安い1万円というお値段で、書き味もとても良いですし、ビジネスライクな黒軸だけではなく、ブルゴーニュやシャルトルブルーといった、女性向きの色の軸もあります。

その上、しばらく万年筆を使わなくても、インクが乾きにくい機能までついているんですよ。

ちなみに、私が買った初めての金ペンは、ナガサワ文具センターさんのNagasawaオリジナルプロフィットのFニブでした。

真っ黒な軸で、いかにも正統派な万年筆っぽい外見なのですが、この書き味は、それ以降に買ったどの万年筆とも違って、とにかく書きやすいんです。 買ったときの記事がこちらになります。

【過去記事】Nagasawaオリジナル・プロフィット

当時は、万年筆のことをあまり知らなかったのですが、ナガサワ文具センターさんでは、オリジナルの万年筆などについては、メーカーの工場での検品のあと、さらに店舗でも再度、検品をして、書き出しのチェックを1本1本されているとか。

そういった、こまやかな対応をして下さっていると、安心して購入することができますよね。

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(ほぼ日手帳にNagasawaオリジナル・プロフィットのFニブで書いたページです)

万年筆を本格的に使い始めて、5、6年経った今でも、しっくりくる書きやすさという点では、こちらの、初めて買ったオリジナルプロフィット以上のものは私にとってありません。

手持ちの万年筆の中では、一番、オーソドックスな外見なんですけど、一番、書きやすいんですよね。

書きやすいから、どんどん使うし、そうすれば、さらに書き味も良くなって・・・といった相乗効果も生まれてくるんです。

さいごに

万年筆の世界は奥深く、だからこそ、「沼」と呼ばれるほどに知れば知るほど、はまってしまう。

その始めの第一歩として、まずは、あなたの最初の一本を選んで、万年筆を使ってみてください。今回の記事が、少しでも、最初の万年筆を選ぶ手助けになれば嬉しいです。